西浦氏は、ハーメルンの笛吹きか?

■専門家会議 西浦氏の誤謬

今日、正式に緊急事態宣言期間の延長が決まった。
以前、「専門家会議の失敗」という記事も書いたが、今回の記者会見でも、やはりどうにもしっくり来ないことがいくつかある。

・ 何故、2週間後(=現在)のデータを示さないのか?
・ 何故、経済を中途半端に、印象だけで考慮するのか?


ということだ。


■何故、2週間後(=現在)のデータを示さないのか?

2月の頃から、専門家会議、特にデータを分析している北大の西浦氏は、 「データは2週間前の状況を見ている」 と言っている。

ならばなぜ、そこから2週間分を 外挿(想定グラフを延ばす) して、「現在は(推測だが)こういう状況だ。だからこういう対策が必要だ。」と、やらないのか?
これは明らかな不手際、分析結果の表現、説明として不十分、不適切である。
学会発表レベルであっても、 「ヘタクソで意味がよく見えないグラフ」 と評されるやり方である。

しかも、このような重大事にあっては、大きな誤解も生む。

前稿「専門家会議の失敗」でも言及したが、 伝え方が10割 なのだ。
わかりづらい、難しいグラフや数値を見せられても、人々は動かないし、誤った理解をする。

実際、緊急事態宣言の際に西浦氏は、「今、8割接触を削減すれば、数週間程度で終息する」といったが、そのグラフは、実データから2週間後を外挿したその日から対策を行った場合のグラフでは無かった。
(横軸は、「流行拡大時からの経過日数」であり、あくまで理論上の架空モデルのグラフだった。)

  現在のデータはここまで(2週間前まで)ある。
  そこから予測すると、現在はここらへんの筈だ。
  このままでは、こうやって(グラフが)オーバーシュートするから、
  8割減らして、〇月〇日後には、こういうグラフ、数値にしたい。

と言ったことを示すのが適切だ。

緊急事態宣言を発出した時点では、東京は1日あたりの(確認)感染者数が100人を超えて数日経ったあとだった。
このデータは2週間前を見ているのだから、本当はこの日の段階では、感染者数(未報告)は、報告の数倍と推定できていた筈だ。
(感染者数は、約6日で2倍になるため。2週間で2の2乗+α)

東京の1日の感染者数が数百人規模になっていた状況だからこそ、緊急事態宣言を出した、ということであれば、国民はより多くが納得がいっただろう。
それを元に、もっと外出自粛の圧力は高まり、現在の感染数値等は、もっと抑制されていたことは間違いが無い。

2週間前のデータしか無いのに、現在までの外挿を行わずに、細々とエクスキューズをつけながらいろいろ解説するやり方は、単純にわかりづらく、一般人のみならず、最初に報告を受ける(研究職では無い)政治家達も理解が難しい部分が出てくるだろう。
そして、上記のように「ああ、東京は100人ちょっとか」という誤解を生み、それは人々の行動変容に影響する。
また、そういった説明を受けての 「最低7割」といった“意訳” も生まれてしまったのかもしれない。

実際、その表現の結果、本日の救急事態宣言延長となったのだ。

  伝え方が10割。

専門家会議の方々には、敢えてまたこの言葉を贈らなければならない。


■何故、経済を中途半端に、印象だけで考慮するのか?

西浦氏は、2月頃の最初の?記者会見でこういうことを言っていた。

  「中世のような完全な隔離政策ではなく、現代にあった日本人にあったスマートな対策を考えている。」

「スマートな」とは、経済をストップしての隔離政策ではなく、経済も生かしつつのインテリジェンスな感染症対策、ということだ。
西浦氏他、クラスター対策班や専門家会議で頑張っている方々には、前回も書いた通り感謝してもしきれない。
相当のプレッシャーの中で作業されていることであろうし、心身共に疲労もしているかと思う。
しかし、それでも敢えて言わなければならない。


  日本は、西浦氏の実験台ではない。


スマートな対策をやりたければ、長年十分に研究・シミュレーションして、誰がなんと言おうと確実なやり方になった暁に、相応の準備と覚悟を持って、政策に反映すべく努力すればよい。

確実性も無く、経済は素人だといいながら、
ズルズルと経済を中途半端に疲弊させるような政策と、
経済を短期間完全に止める方法とを、
定量的な比較もできず、ただ印象だけで「それは中世のやり方」と断じて偏った方法だけにしか目を向けない。

これは、誰かが断じて再考を促すべき重要な問題である。


例えばだが、3月の時点で経済も人も完全に100%止めたとしたのならば、遅くとも1ヶ月+ちょっとで経済は再開ができたであろう。
(8割削減で、数週間以内に沈静化、という西浦氏の試算を元に考察。)

日本の年間GDP約500兆円。
仮に、その1割(約一ヶ月分)が完全に失われたとしても50兆円だ。


あるいは、2月頭の時点で、海外からの入国を100%ストップしても良い。
航空会社も、人的輸送はすべてストップする。
輸入は、物品はストップしなくても良い。
生鮮品以外は、最長9日間、そのまま留置すればウィルスは不活性化するからだ。
(冷凍品はやっかいだ。ウィルスも活性状態のまま保存される。
 冷凍品関係は完全に禁止する必要があるかもしれない。)

補償は、せいぜい航空会社の人件費・経費くらいだ。
年間売上を全て肩代わりしても、JAL+ANAで3兆円。
インバウンド、中国からの訪日外国人の日本での年間消費額2兆円。
冷凍品他をこの期間、輸入禁止にして、上記も含めてすべて今年は国が補填したとしても、高々5兆円前後だ。
(実際には、そこまでは行かないだろう。)

一方、緊急事態宣言のための予算がすでに117兆円。

 ・ 完全な水際対策してたら、5兆円
 ・ 100%ロックダウンしてたら、50兆円
 ・ 現在のズルズル対策で117兆円超

どの施策が、経済的に最も悪手なのか?
こんな簡単な概算ですらわかる、桁違いの明確さである。

現在、専門家会議が、西浦氏が目指している対策は、果たしてなんの経済的根拠があっての方針なのだろうか?


経営工学の分野で有名なこんな話がある。

「ビルのオーナーが、エレベーター待ちの人のイライラを解消したいと考えた。
 エレベーターメーカーに相談したら、数百万円の開発費を請求された。
 経営コンサルタントに相談したら、1万円で解決した。
 彼は、エレベーターの前にカガミを設置した。」 


  “スマート”とは。

時にローテクであっても、ベストな解決方法を迅速に見つけることだ。
決して、高価な機材やレアな知識を駆使することでは無い。

経済は専門ではないと言いながら(だからこそ?)、印象だけで決めつけて、それを「スマート」と呼んで、笛を吹く。

  西浦氏は、13世紀の黒死病の時代に、ハーメルンの町に現れたあの男なのだろうか?

評価を歴史に任せず、今、しっかりと考えて判断したい。
子供達が失われてからでは遅いのだから。

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